<その4.セラミック素子 ラダー・フィルター>

記 2011年05月08日~  ja3npl

  前回まで、LCによるフィルターに、考えが集中していて、問題解決ができませんでした。
  連想思い付きで、7.37MHzのセラミック発振素子の特性を調べたところ、直列共振周波数が、7.05MHz付近にあることを、見付けました。
  直ちに、ラダー・フィルターの実験に入りました。

  1. セラミック発振素子の特性調査
    セラミック発振素子

      セラミック発振素子は、単体素子/2本足/SMD(表面実装)のものを探したのですが、見付かりませんでした。
      「Resonator 7.37MHz、コンデンサー内蔵タイプの3本足、muRata製、空色」のものを、通販RSオンラインにて、購入しました。


    内部定数

      測定を繰返して、内部定数を推定しました。等価回路の図で表すと、左の様になります。

     特徴は、並列共振を構成するCが18pFと小さい事です。単体素子(2本足)の場合は、このCが65pF程度あります。
     このため、この3本足のコンデンサー内蔵タイプでは、より高いインピーダンス、通過損失の少ないB.P.F.を作れる事になります。

    (注)各定数は、実測の周波数特性と、回路シミュレーターで得る周波数特性とを比較しながら、カットアンドトライで求めました。


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      左は、入出力51Ωにて実測の周波数特性です。
      直列共振周波数 Fs = 7,046KHz
      並列共振周波数 Fp = 7,603KHz
      直並差分 ⊿f= 556KHz
      損失 -0.6db (Fs = 7,046KHzにて、Q=80.7、51x2 + 7 = 109 Ω)
      50個を測定しました。直列共振周波数は7,030~7,063KHzの間で分散していました。


  2. ラダー・フィルターの構成

      7.0~7.2MHzのBPFとして構成するため、BW=200KHzとなります。⊿f= 556KHzの1/3となるので、経験から、高インピーダンス、低損失となります。6段構成にすることとしました。
      回路は、シミュレーションを繰り返した結果、次図のようになりました。

    回路
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      回路シミュレーターを使って、得た周波数特性です。

      7.25MHzで、-35db程度あり、充分な減衰です。バンド内リップルは4.5db程度(Sにして、1~2程度)有りそうです。
      BWは、227KHzで、これ以上の幅広にするのは難しい事になっています。(対地容量の少ないのがネック)
      通過ロスは、400Ω系-1.5db程度、入出力マッチング・トランスの損失を加えて、51Ω系-4db程度になると言う予測です。

      このように、帯域巾は期待通りになりそうですが、もう一つの心配は、通過信号の歪でした。(この種の、狭帯域フィルターでは、IM3が、-50~-60dbcと言うのが普通です。)
      実測結果は後述しますが、BWが200KHzと広いため、歪は少なく良い特性でした。無用な心配でした。


  3. 試作・Ver1.0
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      バラックで、組上げた状況です。

      部品の調達は次の様にしました。
       ・Resonator 村田製作所 7.37MHz CSTLS7M37G53
       ・チップインダクタ TDK 3.3uH NL453232T-3R3J-PF
       ・コア RS品番;467-3573、PartNumber;2843002402
      以上 RS通販(アールエスコンポーネンツKK)、2011-03-08時点。


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      実測の結果、シミュレーション通りの特性が得られました。
      通過ロスは -3.6db、帯域内リップルは 3.5db です。
      7,250KHzの減衰は、-40db程度もあります。
    (参考)T.G.の出力レベル=フィルターへの入力レベル=-7.6dbm


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      帯域の端の7,195KHzで、歪特性を測定しました。5KHzほど離れた2信号のIM3は、-72dbcでした。(フィルターへの入力レベルは、-10dbmx2)
      さらに、
      ・帯域の中央の7,100KHz にて、-76.1dbc
      ・帯域の下端の7,005KHz にて、-74.5dbc
    と、同等の値でした。

      このIC-756PROのIM3は、-42dbc(S9+23db;-52dbm @-10dbmx2)でしたから、このセラミック素子フィルターを挿入しても、受信時の歪特性を阻害しない事になります。


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      0~30MHzの広帯域の特性です。
      3.3uHのLを追加したための副共振があり、18MHz付近に現れています。
      IC-756PROに内蔵の「B.P.F.;6~8MHz」が機能するので、結果、影響無しです。


  4. リップルの改善・Ver2.0

      回路定数を調整すると、帯域内リップルを減らすことが出来ます。
      フィルターの入口のシャントCを小さく、奥のシャントCを大き目にすると、右肩部(帯域上端)の特性カーブが、
      奥のインダクターLを小さくすれば、左肩部が改善されます。回路シミュレータで、カットアンドトライして確かめる方法で、値が求められます。
      次回路図中の、*1,*2,*3,*4,*5のC、*a,*bのL を変更しています。

    回路
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      シミュレーション通りの特性が得られました。
      通過ロスは -3.9db、帯域内リップルは 1db です。


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      組上げた状況です。
      基板寸法は、75x50mmです。


  5. 周波数シフト・Ver2.1

      バンド上限の7.2MHzに近接して、7,205KHzに商用局が出ている時が有ります。
      7.0~7.2MHzのB.P.F.では除去し切れません。
      7.0~7.18MHzのB.P.F.を用意することにしました。

    回路
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      シミュレーション通りです。
      通過ロスは -3.4db、帯域内リップルは 1.2db です。

      7,205KHzの信号に対して、-25db程度の減衰をさせることが出来ます。


  6. 周波数シフト・Ver2.2

      まれに、WWコンテストの時などに、7.2MHz以上を受信したい場合があります。
      従って、帯域の上端周波数を~7.26MHzまでシフトしたフィルターを作っておく事にしました。
      強い信号の商用局(複数局)が、7.26MHzより下にある場合は、ダメですが、上にある場合は、少しでも有効と思われます。

    回路
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      通過ロスは -3.3db、帯域内リップルは 1.5db です。


      基板の状況、カバーを付けた完成状況と、基板のPCBEファイルです。  右クリックし、”対象をファイルに保存” でダウンロードできます。

    別ウインドウ拡大表示します。 別ウインドウ拡大表示します。 ダウンロード

これらのフィルターを実使用した結果は、次回に記述します。

以上

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